A Whisper in the Noise CD Transdreamer 2006/04/18 ¥1,653

不吉さをまとったオルゴール?チェンバロ?風の金属音で始まるワルツ調の「the tale of two doves」が一曲目というあたりからがっちり心を掴まれたけど、その後に控えるタイトル曲も、予測できないタイミングで声を病的に荒げるボーカルと子供のあどけないコーラスとの取り合わせが静かに混沌としていてすごい。
全編うっすら埃をかぶったような霞んだ音像がとにかく良くて、風に吹かれたドアのような音色できしきしと鳴るギターや物悲しいピアノ、バイオリンやパーカッションの使い方など演奏面だけでも細かい仕掛けがあちこちに施されていて集中力を途切らせずに聞き込めるのだけど、それらが展開する世界の薄暗さや鬱度が半端じゃない。

六曲目からの流れが私は好きで、後半徐々にノイズに侵食される「havoc」、サビでの合唱は意図して不協和音的に作ってあるのが伺える「until the time〜」には終始物悲しさがつきまとい、そういう不穏な流れにスッと差し出される「the sounding〜」ではピアノが純粋に安らぎを醸し出す側面を担った曲でほのかな月の光を思わせるのもつかの間、次に置かれた昏いインスト「bridal」はまたもやノイズギターまみれでピアノはさっきまでの顔を捨て去り再び闇をつめたく浸している(そして何故このタイトル…)。ラストの厳粛な「the times〜」ではたどたどしく現実に復帰するさまを想像させられ、浄化される気持を味わうものの、最後の最後に入っている断続的な声にうわあ…と怯えた。夜中に遠くで誰かが叫んでいるような得体の知れなさ。

一言で言うならクラシカルなゴスという雰囲気なんだけど、一聴した印象としてはトラウマチックな心象風景をぐちゃぐちゃっと取出してばらばらにつぎ合わせた感じかなあ。でそのつぎ合わせたものからは、意味に彩られたような一貫性やわかりやすい物語(「消費向き」というような)が見出せないから、そういうセンセーショナルな派手さがないだけにじわじわくる。昏々とした眠りに侵食される日常の、悪夢じみた鬱をうまく掬い上げている…というのはあまりに主観的すぎる感想だけど、とにかく気に入った。気分のすぐれない日に横たわって聴くにはいいと思う。ネット上の評価だけ見て買ったけど、ジャケットも好きだしかなりのアタリ。

コメント

nophoto
ファラ
2007年3月1日16:51

どうも。繭さんも聴かれましたか。とても素敵ですよねコレ。僕もネット上で薦められて聴いたんですが、鬱でゴスでサイコというツボ直球(笑)な内容で気に入ってます。

繭
2007年3月2日9:51

良かったですよこれ!最初に目に留まったのはfaraさんの所でなので、感謝です。ゴスだけど仰々しくなく、日常的な温度の延長線上にあるような病み具合が、どんな気分の時にでもしっくりくるのでリピート中です。洋楽には疎いので勉強していきたいところです。
新しいページを始められたんですね。また覗かせてもらいます。
繭

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