ISBN:4048734857 単行本 重松清 角川書店 2003/08 ¥1,890
多分この小説の読まれ方としては、主人公シュウジの目線になってストーリーに感情移入して読むというのがほとんどなのだと思うけど、自分でも不思議なくらいそれができずに別のポイントが気になってしまった(田舎町の「沖」と「浜」と呼ばれる地域の対立の描写は近しいものとして感じられた)。テーマ自体は惹かれるものなのに、自分でもその理由が言えそうでうまく言えない。文庫版で読んだが上巻を読み終えて下巻に移るまでに時間がかかった。
この物語は「僕は」「シュウジは」という人称によってではなく、シュウジに「おまえ」と呼びかける語り手によって、「おまえは…した」という具合に語られる。キリスト教が重要な要素のひとつとして関わってくるだけあって、その語りには物語全体を俯瞰する−全知全能の−者を思わせるところがあり、なるほど作者は意図してこの方法をとったんだろうなあと思いながら読んでいた。
気になったポイントというのはそれに関してのことで、物語の最後の最後でスポットライトが語り手の方へ向けられる箇所がある。そこであらわれた語り手の顔が、実は作中のある登場人物のそれであったのだということが読者へ明らかにされる。登場人物が物語の全体やそれぞれの人達の顛末などを把握することが可能だという方法をとる小説ではないから、とすると私のはじめの印象とは矛盾するこの語り手像をどう考えればいいのか、語り手は本当はなにものなのか?という疑問が出てきてしまったのだ。
読み終わって振り返ると、シュウジの身に起きる凄惨な出来事の数々に比して物語が美しく閉じられすぎている気がしたのがしっくりこなかったのだけど、そこには作者の赦しや切実な希望が込められているからなのかもしれない、と考えると少し納得がいくようないかないような。
うーん今回の感想は特に、ちゃんと客観的に理解できる文章になってるか不安。
一家離散、いじめ、暴力、セックス、バブル崩壊の爪痕、殺人……。14歳の孤独な魂にとって、この世に安息の地はあるのか……。直木賞作家が圧倒的な筆致で描く現代の黙示録。
剥き出しの「人間」どもの営みと、苛烈を生き抜いた少年の奇跡。比類なき感動の結末が待ち受ける現代の黙示録。重松清畢生1100枚!
想像を絶する孤独のなか、ただ、他人とつながりたい…それだけを胸に煉獄の道のりを懸命に走りつづけた一人の少年。現代日本に出現した奇跡の衝撃作、ついに刊行!
多分この小説の読まれ方としては、主人公シュウジの目線になってストーリーに感情移入して読むというのがほとんどなのだと思うけど、自分でも不思議なくらいそれができずに別のポイントが気になってしまった(田舎町の「沖」と「浜」と呼ばれる地域の対立の描写は近しいものとして感じられた)。テーマ自体は惹かれるものなのに、自分でもその理由が言えそうでうまく言えない。文庫版で読んだが上巻を読み終えて下巻に移るまでに時間がかかった。
この物語は「僕は」「シュウジは」という人称によってではなく、シュウジに「おまえ」と呼びかける語り手によって、「おまえは…した」という具合に語られる。キリスト教が重要な要素のひとつとして関わってくるだけあって、その語りには物語全体を俯瞰する−全知全能の−者を思わせるところがあり、なるほど作者は意図してこの方法をとったんだろうなあと思いながら読んでいた。
気になったポイントというのはそれに関してのことで、物語の最後の最後でスポットライトが語り手の方へ向けられる箇所がある。そこであらわれた語り手の顔が、実は作中のある登場人物のそれであったのだということが読者へ明らかにされる。登場人物が物語の全体やそれぞれの人達の顛末などを把握することが可能だという方法をとる小説ではないから、とすると私のはじめの印象とは矛盾するこの語り手像をどう考えればいいのか、語り手は本当はなにものなのか?という疑問が出てきてしまったのだ。
読み終わって振り返ると、シュウジの身に起きる凄惨な出来事の数々に比して物語が美しく閉じられすぎている気がしたのがしっくりこなかったのだけど、そこには作者の赦しや切実な希望が込められているからなのかもしれない、と考えると少し納得がいくようないかないような。
うーん今回の感想は特に、ちゃんと客観的に理解できる文章になってるか不安。
コメント
この本を読んでなくて、日記だけ拝見したのですけど
私にはすごく腑に落ちる感じで、へぇーと思いました。繭さんの文は何だか落ち着けます。
ちゃんとした文章になってるみたいで安心しました。落着くという言葉も嬉しいです。自分がどう見られているかは自分ではよくわからないので。yeelenさんのページもやわらかい雰囲気があってとても好きです。