蛇を踏む

2006年5月6日 読書
ISBN:4163165509 単行本 川上 弘美 文藝春秋 1996/08 ¥1,050

文庫版の裏表紙に、「蛇を踏む」は「若い女性の自立と孤独」をテーマとし、「消える」は「”消える家族”と”縮む家族”の縁組を通して、現代の家庭を寓意的に描」いたものであるとの紹介文があるけれど、川上作品にはそういう国語の教科書的な解釈をあてる必要性はないのではと思う。
その解釈を頭に入れた状態で読み進めながら、これは何かの暗喩なのか?と数行ごとに考えをめぐらせてみたものの、どうもしっくりこない。というのは彼女の世界が独特で難解なためでもあるけれど、それよりも国語の時間みたいな読みに縛られる事がこの作品の魅力を半減しかねないと感じるためでもある。さっぱりと割り切れる解釈だけではすくいきれないところに、小説というものの存在意義があるのではないかと思うのだ。
教訓やメッセージを無理に導き出さなくても、「読み」というのはもっと柔軟でいいはずだし、それでこそを面白いのだなどと思ってみる。
なんて、読み云々とえらそうに言ってますが、大学時代のゼミの先生の受け売りなのでした。小説を手に取ると、先生ならどう読むだろうかなどと最近時々思い出す。懐かしいなあ。

なんて言いながら小説の内容に一切触れていないのは、私もどうにかしてこの物語を理解しようとしたものの上手く消化できなかったため。頭で読もう読もうとして、独特の世界に感覚を委ねて遊ぶ事ができなかった。あとは全部読みきらないうちにおなかいっぱいになってしまったため(「消える」は特に。くどいんじゃないかと思う)。初めて手に取った『センセイの鞄』以降は、特別心に引っかかるものがないので、相性があまりよくないのかも。

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繭

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