夫婦茶碗/町田康

2004年12月12日 読書
ISBN:4101319316 文庫 町田 康 新潮社 2001/04 ¥420

生活に困り妻になじられながら、茶碗洗いの仕事をひらめいてみたりペンキ塗りの仕事についたりするが上手く行かず、クリエイティブな仕事をしようと思い立ち童話作家を目指す事にした男の話。

漫談調のような独り言のような文体に強力に吸い寄せられるようにして一気に読めた。新しいものと古いものとが消化されて渾然一体となったような勢いのある語り口。時々くどくどしい部分もあるので、個人的には気分によっては放り出すかもしれないとは思ったが、今回は面白く読めた。その文体が町田康の一番の読みどころなのかとも初めは感じたが、そういう文体を取り去ってみても、冷蔵庫の卵の並べ方に悩んだり、生活にうるおいをという事で駄洒落を多用した会話を妻としていくうちにだんだんとコミュニケーションが破綻していったり、という場面の選び取り方自体も面白く感じた。

主人公は交通状況がひどくて殺伐とした町に住んでいる。狭い道を自転車がこちらに突撃してきてはそ知らぬ顔をしていたり、事故が珍しくなかったりする。しかしその人が事故に遭ったり死んだりしていく様が(腰からもげたり、土手を転がりながら線路に飛び出たり)、生の重みと切り離されて物語の奇妙な雰囲気を演出するための一つの風景として、どことなく美的なものとして書かれているのが印象的。エキセントリックで狂気じみた風を演出したりする所も。それがいいと思った。小説だからこそですけど。

思ったよりも面白かったです。ただこの手の小説は面白いには違いないのだけど、どこか冷静な目で観察するように読んでしまうところが最近の私にはあるのだった。

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繭

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