Dir en grey CD フリーウィル 2007/02/07 ¥3,675

アルバム「Vulgar」「Withering to death.」のミクスチャー・モダンヘヴィネス・ハードコア系の流れやさまざまな試みを経て、今作ではメロディもかなり排除しメタルコア一辺倒というかメタル要素かなり強めに移行。何度かリピートしているうちに耳に馴染んではきたけれど、初聴きの時の感想は変らず、要はこれをわざわざ選び取って聴くのなら海外のテクニックのあるバンドを聴くよと。メタルって何聴いても似たり寄ったりな私の耳には、突然匿名的な音へと近付いた印象がした。今作からは今後テクニック志向のバンドとして進んで行きたい気概が伺えたのだけど、ずば抜けて技術のある人の集団というわけでもないし…とは失礼な言い方だけど、個人的にはテク崇拝の音楽って割と退屈なので、それよりも彼らにはこれまですぐれたアイディアや美意識があったと思う(初期の楽曲は確かに演奏がしょぼいものもあるが「ASH」なんかはかっこよかったし(ビデオ「楓」に収録されたバージョンが良いな)、変態性全開な「脈」には度肝を抜かれたし)。

前作の、メロウなメロディ部分と畳み掛けるシャウト、「孤独に死す〜」に見られるようなボーカルとコーラスの絶妙な迫力ある掛け合いには有機的な流れや陰影のあるバランス感を感じられたのが、今作にはあまり引き継がれていない事が意外だった。それに「dead tree」のイントロのギターリフやベースのメロウなフレーズにはじまり、サビで悲痛な絶叫で打ち破るという緊迫感ある対比にも息を飲んだ事が思い出されるのに、そういうフックの効いた構成力が(曲単体としてもアルバム全体の流れとしても)失われている感じは否めない。
気になったのはギターで、二人ともリズムを刻む方へ回ってしまっていてツインギターの特色がほとんど生かされていない気がした。「GRIEF」中盤に登場する土俗的なリズムは耳に留まったものの、よく聴いたらドラムとコーラスのおかげだったし。音色は鋭利でミドルテンポの重たいギターリフが頻出するのだが、その割には音が軽いしシンプルであまり練られていないフレーズで全編押し切っている印象を、素人の耳には受けた。プレイヤー目線で聴けば実は凄い事をやっていたりするんだろうか。
ボーカルは、ハウリングのような金切り声、押し殺したように歌われる低音、畳み掛けるデス声という風に色々と工夫してありとても攻撃的だけど(「GRIEF」の中盤の「わうわうわう」みたいな囁き声は昔を髣髴とさせてツボ)、以前よりもかなりシャウトに比重が寄っている。「THE PLEDGE」あたりは哀切なメロディーも叫びに近い高音もきれいに歌えていて印象的ではあるものの(楽曲としてもこれが一番好み)、ますますライブで自分を追い詰めそうだなあこれ、というキー設定は無理しすぎじゃないかと…。

気にかかっていた「CLEVER SLEAZOID」は新録で(シングルは全て新録)、ラフな感じも含めてうまいことラストにおさまっていたのがおっ!と喜ばしかった(が、それは構成面から見て全体から浮いていないという意味においてで、純粋に演奏を見ればシングルの方がかっちりしていてメリハリもあって良かったような。専門的な事はわからないがどことなく全パートがべたっとしている(ミックスの関係?)。「The dark〜」部分のギターのフレーズも悲痛さを煽っていて良かったのが若干変更されている)。

例えばラウドパークではごく一部の熱心なメタルファンは元(今も?)ビジュアル系というバックボーンだけでも彼らを偏見の目でまなざしたと、ネット上で流し読みした幾つかのライブレポでは言われていて、彼らがビジュアル系という括りからスタートした背景をもっているのは必ずしも枷とはならないと考えているのだけど(まあ確かにシーン全体としては豊かとは言い難いけれど)、広い世界では色々あるのね…と憮然とした印象をもって今作に臨んだせいか、その偏った印象をそのまま音の後ろにも読み取ってしまった(さすがに勝手な事言ってますね、でも本当に海外進出の影が残念な形で色濃く落とされていると個人的には思う)。実際のところはポジティブに感化されてきたのだとは思うけど。
うーん、個人的にはシングルで言えば「朔-saku-」がピークかなあ。あんなマッドで構成もすぐれた濃い曲はもう出てこないかな。メロディーの際立った曲やもっと展開の練られた楽曲に彼らの良さが発揮されているだけに、少し残念。彼らに対しては思い入れや期待が強すぎるだけに(久々にフライングゲットしたCDだし)、くどくどと文句ばかり書いてしまった。建設的な事のひとつも書けたらいいんだけど。でも何だかんだで聴いている。

コメント

nophoto
Arnie
2011年5月26日23:53

Haha. I woke up down today. You’ve chereed me up!
繭

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