読書

2005年10月28日 読書
◆保坂和志『猫に時間の流れる』は、この表紙だけ見て手にとったのだけど、そもそも保坂さんの文体が何だかぬるいというか、馴染みにくくてむずがゆかった。主人公の暮らすアパートの住民とその飼い猫とののんびりした時間、そこに現れた気性の荒い野良猫との出会い…みたいな内容。
主人公が自他に向けるやたら分析的なものの見方が好きになれない。こんな風に周りを傍観(という言い方がふさわしいような)している人が身近にいたら、話を聞けば聞くほど気持ちがもやもやっとしそうだ。村上春樹とかが好きな人には合うんじゃないかと思った。

◆車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』『金輪際』。短編集の『金輪際』収録の「変」はエッセイに近い作品。偶然保坂氏の事が出てくる。
過去に芥川賞受賞最有力候補だったらしい筆者だったが、物騒な事件などの相次いだ不穏な年だったため、そんな時にはふさわしくないという理由でかわりに保坂氏が受賞したという経緯があったそう。「何もない日々というものの有難さを感じさせてくれる」大体選考委員のこういうコメントが付いていたかと思う(手元にないためうろ覚え)。忌々しさを抑えきれない車谷氏。
その選考委員全員と保坂氏に対して、思い切り名指しで恨み節を書いているのだが(最後の五寸釘云々はさすがにフィクションかなと思ったけど違うのか…)あまりに執念に満ちていて、何より一般的に社会で生きる人であればまずこんな事は公の場であらわにはしないだろう…と度肝を抜かれた。こうやって自分のおどろおどろしいなまの部分をこれでもかと垂れ流して生きる人が今の時代にいるという事に衝撃を受ける。
結局何冊も読んでいるが、『鹽壺の匙』みたいなのだけでなく、女の人とのことを書いたものもかなり面白い事に気づく。

コメント

繭

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索