結局五千円で落札したチケットを手に心斎橋クラブクアトロへ。昨日からの熱に悩まされながら、這ってでも行きたいのがsyrup16gのライブというわけで。SEはナインインチネイルズらしい。詳しくないので伝え聞き。
    
I.N.Mから始まった時に多少がっかりしたというのは、自分の中で印象が薄い曲だから。だけど「そこで名も知れず〜」から静かに訴えかけてくるメロディーの盛り上がりは、凄く聴かせるものがあった。舞台上にたちこめたスモークに赤や黄金色のライトが溶け込み、彼岸此岸を隔てるようなぞくっとするものを今回も感じさせてくれる。初めて見た彼らのライブでの「もったいない」は歌詞の内容とも相まってそういう意味で物凄く恐ろしかったのを鮮明に覚えている。
そして「Inside out」で跳ねる客が続出した後に、怒涛の新曲攻撃が待っていようとは…。この人ら、過去にHELL-SEEをアルバムの曲順通りにやりきった事もあるし、途中旧譜もやってくれりゃあ…何だか極端だなあと苦笑いする。
まず「途中の行方」はタメのきいたリズムが印象的で、食い入るようにステージを見つめる。これは名曲の予感が早速した。「チャイム」は気だるい昼下がりを思わせるメロディー。学校の事を歌っている様子。この時に、過去の雑誌の「もう逆さに振っても何も出てこないんです」との発言を読んだ衝撃を思い出し、だけどこんな良い曲作れるじゃない、まだまだ期待大だなと思っていた。けれど正直その後続いた新曲群にはあまり心を動かされなかった。熱でぼーっとしていたせいもあるが。
新曲3は何だこのロケンロー(死語?)な曲は!というミッシェルみたいな異色曲、新曲4もまた畳みかけるようなアップテンポな楽曲。5ではアコギに持ち替えゆったりと優しいメロディーを聴かせる。「春ですね〜頭のおかしくなる季節ですね」とMCが入り、6は春を歌った軽快でいかにもなバンド曲、7はオルゴール調の綺麗な曲。あとは詳しく覚えておらず若干中だるみしていて、腰痛と吐き気のために曲間ごとにかがんでいたが、新曲10は歌詞から容易に風景の浮かぶような、静謐な光をそっと滲ませるメロディーで、まずイントロのファルセットのコーラスからして霊的ですらあった。これで意識が醒め再びぐっと持っていかれたのを鮮明に覚えている。

新曲は全体的に開放的で安楽で爽やかさに満ち溢れた、ポップで柔らかなトーンをそなえているものが多く、正直戸惑った。この日五十嵐氏が今まででは考えられないくらい饒舌で(ろれつも回ってたし)客とのコールアンドレスポンスの間合いが絶妙すぎる!と思う場面もあった。客のノリ方の関係もあるし全部含めて違和感を覚えてしまう本編だった。新しい道を模索中なのかもなあと考えてみる。
だけどつくづく、勢いでぶっぱなす系の曲やありきたりな言い回しの歌詞は彼らがしなくてもいいのにと思う。最終的にシンプルという所に行きついたというのならいいけれど、それならそれでシンプルな言葉やメロディーをどう効果的に響かせるかをシロップに求めたい、愛を歌うにしろこの人ならもう少し深みを与える事ができるはずだ…と夢見がちな気持悪い状態でいる自分だ。あかんなあとは思うもののこの後聞く旧譜の方が精彩を帯びて聴こえてしまう。だからその合間に新曲10が入り、暗い水底を覗いたかのような奇妙なエアポケット感にぞくっとして気持ち良かった。要ははしゃぐのではなく、ぞくっとしに彼らのライブに行きたいのだと思う。

「月になって」の美しさには飲まれた。

 夜は寒いから 明日が怖いなら
 そばにいるだけ 朝が来るまで
 君に間違った事はなく 道を誤った事もなく
 ありのまま何もない君を 見失いそうな僕が泣く

というシンプルな歌詞が切ない音色に乗って安堵感を伝えてくる。何度も聴いたのに新鮮な響き。静かに感動する。それだけにギターソロで「ヒュー!」「サイコー!」と叫んだ客は気に障ったし許せん。ずっと叫んでいた人らしいけど、他人の自慰行為に興味はない出てけ。
それに限らず客のノリがやたら元気だとは始終感じ続けてて、生活どころかリアルですら合唱された日にはがっかりした。打ち込みメインの原曲が生々しく変化するのが聴き所で、去年の神戸ライブでは度肝を抜かれて放心するほどだった。なので合唱で緊迫感がそがれるのが憎い。また演奏自体も熱が奔逸しすぎて微妙だった。熱気をぎりぎりの所で抑えた演奏の方が気迫が満ち溢れて好きなのだけど。(嫌な客だよ…)
実際に生活ができなくなるというのは辛い事だのに…と違和感を覚える。だけど落堕のテンションは普通のライブっぽくて「おおー」と面白くも思った。足の裏から音圧が伝わって体をめぐるのが楽しいんだよと思っていたが、今回は周囲の人に乗せられてちょっとのってみた。自分で失笑してすぐにやめたけど。そんな風に客の合唱は断じて要らない派の私だけど、リアルの「全てを喜びに変える!」の絶叫に「オオオオ…」と客の歓声が残響のように重なってきた所、空をなくす曲間での「ギエエエエ」みたいな歓声はかなり曲とマッチして、こういうのがライブの面白い所だと思ってみたりも。

ところどころギターが怪しい部分もあったけど、あとギターがキンキンしてたけど、演奏は本当にまとまってたなあと思う。特に空をなくすの音のあまりの分厚さには、一つの生き物がそこにあるようで圧倒された。何だかんだで私はこの人の根底に流れるメロディーを愛するのだろうと思ったが。(キモいな…)
Rebornの最後、「生まれ変わってゆく、ゆく、ゆく―の―…さ…」と余韻を持たせた歌い方と声の震えがしみじみとして、美しい締めくくりになったと思う。上手くできすぎて逆に物足りない、という思いも一方にはあるのだけど…。
五十嵐氏の饒舌っぷりは「躁転」という結論が友人間でつきました(何だと思ってるんだ)

最後に、かがんでいた私に「大丈夫?」と声をかけてくれた女の子、本当に有難う。

本編
I.N.M
Inside out
新曲1「途中の行方」(俺は狂っちまったけど何もかも忘れられない〜)
新曲2「チャイム」(Every time is lost 眠たいだけ〜)
新曲3「Honey’s dead」」(床に落ちてる床に落ちてる床に落ちている〜)
新曲4「AIR LIGHT」(六本木ヒルズにのぼろうベイベーという歌い出しに吹いた)
新曲5「ラファータ」(心に傘が云々〜小さくてちっぽけな僕達は〜)
新曲6「Scene through」(春が云々、あまり記憶に残らず)
新曲7「君を壊すのは」(三拍子、マーチ風のドラミング)
新曲8「イマジネーション」(悲しいだとか寂しいだとか〜イマジネーション体を持て余す〜「女の子が聴いたらドン引き、男ってしょうがないねえ」とMC)
新曲9「バランス」(途中変拍子になる)
新曲10「STAR SLAVE」(銀色のプラネタリウムを黙って見ている〜)
新曲11「多分」(知らない人の胸で思い出すのはあなたの笑顔だけ 多分)
新曲12「バナナの皮」(下ネタじゃないですよ!って前置きする五十嵐氏…笑)

en.1
月になって
生活 (サビのメロディーとベースラインの絡みが…!)
落堕(中畑たいこ大暴れ、ちなみに坊主でした)
en.2
リアル
神のカルマ
天才
en.3
パープルムカデ
クーデター〜空をなくす
翌日
en.4
reborn(弾き語り)

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繭

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