ISBN:4063142868 コミック 講談社 2002/03/22 ¥580

台詞の配し方が憎いくらいに絶妙なのがまず凄い。台詞単体の良さというよりは、それが一番効果を発揮する流れやシチュエーションの中に置かれていると言える。それが痛いところをとにかく容赦なく突いてくる。台詞運びがこなれていないところが、これはどういう意味?などわかりづらさもたびたびあったけど、その分訴えかける力は圧倒的にあって良い。
大学サークル内の恋愛を描いた漫画なのだけど、生易しいものではなく何故ここまでと思うくらいどの人物も赤裸々に相手に向かっていき、その関わり方がとても痛々しくて重い。誰もが真剣で、その分拙さもある。だけどその姿に物凄く心をゆさぶられてしまった。それは決して肯定的な意味のみではなく、動揺した部分もたくさんあったから、読み終えて複雑な思いがずっと交錯している。「あたしね ホントゆーと自分のことでせーいっぱいでさ」と芹生との喧嘩のシーンでの台詞があるが、弥恵の自分自身を持て余した不安定さや未熟さ、無意識のうちに自分が傷付かないようにしながら裏目に出ている所など、そこにどこか自分を見ているような気がして、だからこの漫画から逃れられないものを感じて結構キツイなあと苦笑する部分も多々あった。

単行本二巻で完結する物語だけど、二巻終わりの芹生の心情が吐露されていくくだりにはとにかくぐっときたし、澄緒の「やりすごしてよ/それはナシなんだよ」に至る流れで得たカタルシスは物凄い。その後の場面も好きだ。読みながら自分がどんどん静かに沈んでいくのがわかったが、どうしようもなくあたたかい気持も同時に自分の中にあった。短い連載とは思えないほどの情報量を含んだ漫画だと思う。
何度も読み返している作品。

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繭

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